研究概要 |
α_2Agonistの局所麻酔作用増強や作用時間延長効果についての報告は多く見られるが、下顎神経ブロックに応用した報告は認められない。今回我々は、前投薬として経口投与したクロニジンが、下顎神経ブロックの効果に与える影響について検討した。疼痛に対する感覚は個人差が大きいので、同一人に異なる薬剤を用いて行う必要があるため、研究開始の90分前に前投薬としてクロニジンを4μg/kg経口投与してから、3%メピバカイン2mlにて下顎神経ブロックを行う時期と、前投薬は行わず3%メピバカイン2mlにて下顎神経ブロックを行う時期に分け、局所麻酔作用と副作用の程度を観察した。痙痛閾値の測定には電気歯髄診断機(パルプテスター;アナリティック社)を使用した。下顎孔伝達麻酔5分後、15分後、30分後、1時間後、1時間30分後、2時間後、2時間30分後、3時間後、3時間30分後、4時間後に血圧、脈拍数、RPP, BIS値および歯牙の疼痛閾値の測定を行った。クロニジンにより、局所麻酔作用は有意に延長されたが、血圧、RPP、BIS値は有意に低い値を示した。脈拍数は、クロニジンを使用したときの方が、有意差はなかったものの全時間帯で低い傾向を呈した。以上の結果より本方法は、RPPを低下させることから虚血性心疾患患者に対し、安全に使用できる局所麻酔法ではあるが、催眠、低血圧、徐脈といった副作用が強いためモニターなどの設備が整っていない施設においての臨床応用は難しいものと考えられた。
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