本研究の目的は、超音波を用いて橈骨または指骨での骨端軟骨(成長板)の骨化程度を、被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立するため、超音波によって得られた波形および解析画像と手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求め、それを用いた骨成熟評価の臨床応用を行うことである。まず、イスラエルSunlight社の超音波による骨年齢測定装置である"BonAge"を用いて獨協医科大学小児科と協力し、男女119名の左側の橈骨および尺骨での"BonAge"の測定結果と、同時に撮影した手部X線写真からTW2法およびCASMAS法で求めた骨年齢とを比較した結果、有意で高い相関が認められた。本装置は、手首関節部の骨幅と超音波伝達速度(SOS)を測定することにより骨年齢を算出している。しかし、算出までのアルゴリズムが不明であり、日本人での評価に関しては標準化または換算式の作成が必要で、測定部位についての検討も必要であると考えられた。次いで、超音波透過法を利用して波形および画像の解析を行った。手部の三部位での波形および利便性から、今後は第三指中節骨で計測することとした。この部位で10MHzの超音波診断装置と7および5MHzのトランスデューサーを用い、骨癒合前と後の被験者において、同時に撮影した手部X線写真での癒合状態と超音波透過量の比較を行った。さらに、2本のアクリル棒の間隙を変化させ、透過波の画像および波形の検討した結果、超音波透過量と間隙量は正の相関が認められた。間隙が大きくなると特に焦点無しのトランスデューサーで高い相関が認められた。本研究の結果から、超音波を用いて非侵襲的に骨成熟度を評価できることが明らかとなった。今後の展開として、多くの被験者において測定を行い、上・下顎骨の残余成長量の予測値と実際の値を比較し、予測精度の検討を行う予定である。
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