研究概要 |
実験動物にビーグル犬4頭を用いて、口唇口蓋裂患者の顎裂を想定した10mmの実験的骨欠損部を作成し、同部位への上顎歯槽部の骨延長術を異なる移動量で行った際の歯根膜周辺の神経、血管系の変化様相ならびに骨延長術により誘導される新生歯槽骨の形成様相について、レーザードップラー血流計、レントゲン写真を用いて経時的に観察、解析した。 上顎歯槽部の骨延長量により実験群を10mm移動群と6mm移動群の2群に分けた。また、非移動群と未処置群をコントロール群とした。実験群とコントロール群について、歯槽部骨切り直後より、0,3,5,7,9,20,30,40,50,60,70,80,90,100日に移動した歯槽骨内の歯髄における血流動態の変化をレーザードップラー血流計を用いて測定するとともに、レントゲン写真を用いて骨化度を比較した。両群共に骨延長開始後100日で屠殺した。なお、ビーグル犬の飼育、実験は本学動物実験施設にて行った。 歯髄血流量は、10mm移動群群では骨切り前のレベルの血流値にまで回復するには、100日程度必要だったのに対して、6mm移動群では、回復期間の短縮を認めた。歯槽部骨切り後100日のレントゲン写真上でも新生骨の骨化度に、10mm移動群群と6mm移動群では差異を認め、10mm移動群群では骨化度が低かった。 以上の結果より、上顎歯槽部の骨延長においては、血流の回復期間に関して、移動量による閾値の存在が示唆された。
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