研究概要 |
仮骨延長術に伴う周辺組織の再構築に関する至適条件を模索するにあたり、1.新生歯槽骨の形成様相、2.新生歯槽骨への歯の移動を行った際の新生歯槽骨の形成様相の特徴の抽出を図った。先行実験において、骨延長に伴う歯槽骨周辺部の血流の回復には長期間を要する事が示され、また骨密度に関しても延長後100日においても、術前の値まで回復していないことが分かった。そこで、骨折の治癒促進を目的として臨床的に通用されている高気圧酸素療法(HBO)に着目し、HBOが骨延長部位の歯髄血流、骨密度の回復に与える影響について、ビーグル犬を用いて実験的に検討することを目的とした。ビーグル成犬6頭の顎裂部に相当する部分に近遠心長10mmの骨欠損を作成し実験側とした。反対側は骨欠損作成を行わず対照側とした。骨欠損作成2ヶ月後、実験側上顎第三前臼歯近心部、左側犬歯歯根上部に歯槽骨の皮質骨骨切り術を行い、'bone-borneによる骨延長用装置を装着した。3日間のlatency period後、1mm/dayの速度で10日間骨延長を行った。骨延長終了後、3頭のビーグル犬にHBO(20days;2.5ATA,60mins/day)を施行し、実験群とした。また、骨延長のみを行いHBOを行わなかった3頭を対照群とした。骨延長開始から100日までの上顎両側犬歯歯髄の血流動態をレーザードップラー血流計(Periflux4001,PERIMED,Sweden)を用いて経時的に記録した。また骨切り開始から100日後に屠殺し、各々の試料を通法に従いポリエステルレジンに包埋した後、pQCT(peripheral Quantitative Computed Tomography)を用いて骨密度を計測した。統計的検討にはMann-Whitneyノンパラメトリック分析を用いて、両群間を比較した。犬歯歯髄の血流値は、対照群では血流値の回復に約100日を要した。一方実験群では平均70日後には血流値が回復し、70日目の血流値において両群間で有意差を認めた。また新生骨領域における骨密度においても、対照群に比較し実験群では皮質骨骨密度が有意に高い値を示した。さらに、新生歯槽骨への歯の移動実験に関しては、現在実験系を確立したところである。
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