研究概要 |
本研究では、実験的歯の移動時のMK-801全身投与による三叉神経知覚核群と下行鎮痛抑制機構各核群のc-Fos陽性細胞発現を検索するとともに、下行鎮痛抑制機構の影響を検討し、これらを総合的に評価することによりMK-801全身投与による疼痛抑制機構を解明することを目的とする。 8週齢Wistar系雄性ラットに対し、麻酔下でMK-801を0.03,0.3,3mg/kg腹腔内投与後、Waldoの方法に準じて上顎臼歯の実験的歯の移動を惹起した。実験的歯の移動開始2、4、12および24時間後、脳の連続凍結切片を作製し、LSAB法にてc-Fos免疫組織化学染色を行った。結果、三叉神経知覚核群においてはMK-801の濃度依存的にc-Fos陽性細胞数は有意に減少するのに対し、下行鎮痛抑制系においては有意に増加することが明らかとなった。このことはNMDA受容体を遮断することによって、実験的歯の移動に伴う侵害性刺激を中枢レベルで効果的に抑制することが可能であることを示している。これら一連の結果は国際的に評価の高い英文雑誌(Brain Research)に掲載されるとともに、国際歯科学会においても発表した。 現在、MK-801の作用部位であるNMDA受容体の免疫組織化学染色を行い、三叉神経知覚核群および下行鎮痛抑制系のNMDA受容体陽性細胞の分布を検索している。さらに、下行鎮痛抑制機構各核群やその中継核を神経毒で遮断したうえで、MK-801を前投与し実験的歯の移動を行い三叉神経知覚核群でのFos陽性細胞の発現を検索することにより、どの程度下行鎮痛抑制機構が作用しているかを検索する予定である。
|