近年、生活習慣病と肥満との密接な関係が指摘されている。また小児期の食育への関心が高まっており、口腔と全身の健康の関連性について注目が集まっている。本研究は、食事を摂取する際の咀嚼時の口腔内感覚入力が、その後のエネルギー代謝調節機構に関与しているどうか、メカニズムの解明を目的としている。これまでラットに形状・硬度の異なる飼料を与え、ラットの体温および活動量を計測し比較を行ってきた。今回、食育における咀嚼の重要性を明らかにするため、小児期の咀嚼機能を評価する臨床的データとして、小児の咀嚼を運動学的データとして記録・解析した。咀嚼運動は、大きさが同じで硬さの異なるグミを被験食品とし、運動学的データとして、咀嚼のリズム、時間、咀嚼運動経路の大きさ(幅・高さ)などを検討した。これは、硬さの異なる食品を口腔の感覚器で検出し、中枢を介して、どのように末梢の運動に反映されているかを検討するためのものである。その結果、健常な小児においては、異なる硬さの食品を咀嚼した場合、咀嚼経路の大きさやリズムが異なる事が明らかとなった。また、過去の研究において健常者が硬さの異なる食品を咀嚼した場合、嚥下にいたる咀嚼回数が異なる事が、既に報告されている。以上のことから、今後、肥満小児の咀嚼運動を健常者と比較することによって、肥満小児の咀嚼の特徴を明らかにし、健常な咀嚼機能を育成するため、つまりは食育のための咀嚼の診断および指導方法を確立していきたい。
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