ヒトの思春期に相当する生後8週齢のWistar系雄ラットを用い、カルシウム摂取量とイプリフラボン(IF)が軟骨内骨化に及ぼす影響について検索を行った。 その結果、光顕的所見において、カルシウム摂取により、石灰化基質の増加および軟骨吸収細胞の増加がみられた。骨基質においても、骨芽細胞の増加がみられ、骨梁も太く、軟骨層に垂直に走行していた。さらに、高カルシウム食と同時にIFを摂取すると、軟骨組織から骨組織への置換がさらに顕著に認められた。 超微形態学的所見においては、カルシウム摂取により、軟骨細胞層では、石灰化小球の癒合所見が多くみられた。骨基質では、吸収窩を取り囲むように骨形成部が認められた。さらに、IFを同時に摂取することにより、軟骨細胞層では、石灰化小球の癒合がさらに顕著になり、縦走基質により明瞭に区分されていた。骨基質では、骨吸収所見より骨基質形成所見が広範囲に認められた。 微細構造学的所見においては、十分なカルシウムを摂取すると未分化間葉細胞の増加、さらに未分化間葉細胞から骨芽細胞への分化が促進され、細胞周囲には微細なコラーゲン原線維の増加がみられた。骨基質表層には幼若な骨細胞の増加がみられた。さらに、IFを同時に摂取することにより、さらに骨芽細胞の増加が顕著になり、骨基質表層に幼若型骨細胞の増加、骨基質深部では核・細胞質比率の大きい成熟型骨細胞の増加がみられた。一方、破骨細胞は、ruffled borderが扁平化し、骨基質表面から遊離していた。 以上の結果から、カルシウム摂取不足により第二次性徴期に骨虚弱状態に陥っても、カルシウムとIFを同時に摂取することにより、下顎頭軟骨層の成長促進、軟骨基質の石灰化促進に引き続き、骨形成促進と同時に骨吸収抑制が行われ、カルシウム摂取不足に生じたダメージを回復することが示唆された。
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