骨格性の開咬患者にみられる口唇閉鎖機能不全は、顔面の垂直的な長さと関連した口唇閉鎖機能を示していると考えられる。 平成16年度の研究では、下顎骨の時計回転による顔面高の増加と口唇閉鎖機能との関係について検討した。被験者は正常な切歯被蓋関係を有し、前歯部に著しい叢生を認めない17名の成人ボランティア(平均年齢:20.5±6.5才)である。九州歯科大学倫理委員会の承認を受けた研究の目的と計画を被験者に説明し、インフォームドコンセントを得た。被験者は安静時における口唇閉鎖時と離開時の下唇の筋活動をもとにcompetent lip群とincompetent lip群に分類した。個々の被験者において、オクルーザルスプリントを口腔内に装着して咬合を挙上し、口唇閉鎖および離開時の下唇の筋活動を生体機能測定装置(PowerLab)を用いて30秒間記録し積分値を算出した。その結果、下唇の筋活動と顔面高との間に有意な相関関係を認め、下顎の時計方向への回転による咬合の挙上によって口唇閉鎖不全が発症することが分かった。 また、平成17年度の研究では骨格不正咬合者は口唇閉鎖機能不全を示し、ガム咀嚼運動を阻害していることが示唆され、外科的矯正治療による形態の改善が口唇閉鎖機能の回復に有効であることが分かった。
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