口蓋融合部のMedial Edge of Epithelium (MEE)の運命は、次の三つの仮設が考えられている。一つ目に、細胞が死期の運命をたどるProgramming Cell Death、二つ目に、近接する上皮へのMigration、最後に、上皮-間葉組織のTransformation (EMT)の三つが考えられており、これらの複合によるものともされているが、未だ正確なMEEの細胞マーカーがないため明らかになっていない。そこで今回申請者は、上皮および間葉の細胞マーカーを使用し、MEEに特に関係の深い遺伝子免疫染色を重ね合わせることにより、二次口蓋融合時のMEEについて明らかにした。 実験に使用したWnt1-cre/T26R mouseのCranial Neural Crest drive (CNC)の細胞は、β-gal (+)細胞として口蓋の間葉組織に認められた。しかし、口蓋の間葉細胞にはβ-gal (-)の細胞についても認められた。これらの細胞を明らかにするため、DiI染色を行い、口蓋融合後にMEE由来の間葉組織があるかについて重ね合わせを行った。その結果、口蓋融合後にDiI (+)の間葉組織が認められ、それらはβ-gal (-)間葉組織であり、明らかにCNC由来の間葉組織とは区別することができた。更に、申請者らは、MEE細胞と関係が深い、TGF-β3およびTGF-β type III receptor (TβR-III)について、免疫染色を行い、その重ね合わせに精工した。TGF-βについては、MEEを含むすべての上皮細胞に発現を認め、TβR-IIIについては、MEE上皮に特異的な強い発現を認めた。これら、TGF-β(+)及びTβR-III(+)細胞については、すべてβ-gal (-)であった。DiI(+)上皮細胞は、TGF-β(+)およびTβR-III (+)であり、口蓋融合後のDiI (+)の間葉組織は、それぞれ、TGF-β (+)であり、TβR-III (-)であった。 以上より、細胞のheritable markerおよびcell lineage dyeを使用し、MEE上皮細胞の上皮-間葉トランスフォーメーションについて明らかにした。
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