研究概要 |
マラッセ上皮遺残細胞が分泌するアメロジェニンとそのスプライシング変異体は歯根表面に近在するセメント芽細胞前駆体細胞の破骨細胞誘導、支持能力ならびにセメント質基質産生能力に影響を及ぼす。セメント芽細胞前駆体細胞の発現する骨シアロ蛋白質(BSP:bone sialoprotein)は基質Scaffoldとしてオートクリン、パラクリン作用を持ち、歯根吸収を抑制し修復を行う機能的バリアーの本体である可能性が高い。また、その機能的バリアーには矯正力のような機械的外力が影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では歯小嚢由来前駆体細胞MDFE6Δ127にウシ由来精製アメロジェニン蛋白質ならびに周期的伸展力(6%,1Hz)を加えて、BSPの発現への影響を転写、翻訳レベルで検討した。ウシ由来精製アメロジェニン蛋白質(1μg/ml)は48時間メディム中に添加することにより、MDFE6Δ127においてRT-PCRで半定量するBSP遺伝子発現を1.6倍上昇させた。周期的伸展力(6%,1Hz)の24時間に及ぶ負荷はMDFE6Δ127におけるBSP遺伝子発現を約2.0倍に上昇させた。また、アメロジェニンを加えた後、周期的伸展力(6%,1Hz)を負荷したMDFE6Δ127のBSP遺伝子発現に相加、相乗的効果は認められなかった。アメロジェニン蛋白質(1μg/ml)はMDFE6Δ127のBSPプロモーターの転写活性をpLUC9.0kで4.0倍、pLUC5.2kで1.5倍に有意に増加させた。pLUC0.8kでは陰性対照と変化は無かった。BSPプロモーターの転写開始点から上流5.0kb-9.0kbにアメロジェニン応答性領域が存在することが示唆された。周期的伸展力(6%,1Hz)の24時間に及ぶ負荷はMDFE6Δ127のBSPプロモーターの転写活性をpLUC9.0kで2.0倍、pLUC5.2kで3.2倍、pLUC0.8kで1.5倍に有意に増加させた。BSPプロモーターの転写開始点から上流5.0kb付近にアメロジェニン応答性領域が存在することが示唆された。以上からアメロジェニン蛋白質ならびに周期的伸展力は、MDFE6Δ127のBSP遺伝子発現を転写、翻訳レベルで促進する事が確認された。
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