前年度、口腔刺激を減少させたモデルとして経口摂取させずに経管栄養飼育した老化促進モデルマウスを用い、海馬機能への影響を調べた。その結果、海馬での樹状突起の長さが、若齢期では差はなかったが、老齢期では経管栄養群の方がコントロール群と比較して有意に長さが短くなっていた。 このため今年度は、9か月齢の老齢期雄老化促進マウスSAMP8を用い、咀嚼障害として、臼歯部にレジンを盛ることによる咬合挙上状態を惹起させ、8日、15日、22日間飼育し、その後、Morris水迷路テストによる空間認知能と、Nissl染色による海馬神経細胞数を測定した。その結果、咬合挙上することによりすべての群でプラットホームへの到達時間の短縮ペースがコントロール群に比べ抑制され、特に22日間挙上したものが最も抑制された。また神経細胞数もすべての群でコントロール群に比べ減少していたが、挙上期間が長いほど神経細胞数の減少も多かった。海馬の典型的な加齢変化は空間認知能の低下と神経細胞死であるといわれており、咬合挙上により同様の現象が認められたことは、咬合挙上による咬合障害により加齢変化が促進されることが示唆された。 今後更に歯を抜歯するなどの咬合障害を惹起させ海馬での変化を調べる予定である。
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