小児期からの不適切な食生活が全身的に老年期まで影響を及ぼす可能性がある。その原因として口腔から中枢への刺激が減少し、中枢での活性が減少することが考ええられ、その点を実証することを目的に本研究を行った。 中枢への刺激を減少させる手段として、食物を傾向摂取させずに、直接胃の中へ食物を入れ、口腔を使わない状態にすることで、中枢にどのような影響が生じるかについて検討した。具体的には機能的影響としてMorris水迷路テストにより空間認知能を調べ、形態的影響として水迷路テストにリンクした記憶に影響する海馬でのFos蛋白陽性細胞、錐体細胞数、スパイン数を検索した。Fos 蛋白は細胞が興奮した際、直早期遺伝子によって作られる核内タンパク質の一つであり、口腔からの刺激が多く、中枢が活性化されれば中枢のFos 免疫陽性細胞の発現が多くなる事を利用した。 その結果、経管栄養飼育により老齢期のマウスではMorris水迷路テストでゴールへの到達時間の延長がみられたが、若齢期のマウスでは影響は見られなかった。また海馬でのFos陽性細胞、錐体細胞数、スパイン数についても老齢期マウスでは減少が認められたが若齢期では影響は認められなかった。 更に咬合障害として咬合挙上して同様の実験を行ったところ、老齢期のマウスではMorris水迷路テストでゴールへの到達時聞の延長、錐体紳脚数の減少がみられた。 これらのことより、口腔を使わない(咀嚼)ことが、小児期では明らかな影響は現れなかったが、老齢期では、中枢、特に海馬に影響し、認知症との関連が示唆された。
|