研究概要 |
顎変形症の外科的矯正治療では,術後の咬頭嵌合および上下の顎関係を予測した術前矯正と,軟組織側貌の審美的調和および術後安定性を考慮した顎矯正手術が治療結果を左右する.本研究では,側貌の審美的調和ならびに術後の安定性を包含した顎矯正手術支援システムの開発を目的としている. 本年度は,44例の顎変形症患者のデータを用いて,術前症型の分類マップと,手術による硬組織移動量の分類マップを作成し,2つのマップの関係から術前症型と硬組織移動量に関する審美性の変化について検討した.(バイオメディカル・ファジィ・システム学会第15回年次大会にて発表した。) 術前症型の分類マップ作成にあたり,患者を表現する属性は,これまでの研究で分類に有効であることを示した11計側項目を採用した.それらを入力データとて,自己組織化マップで2次元の分類マップを作成した.自己組織化マップは,多次元のデータ集合を,それらの類似性を保持したまま2次元のマップ上に写像するので,データ間の類似性を視覚的あるいは直感的に把握することができる. 2次元マップ上に写像された44例の術前分類(症型)を観測した結果,申請者らが提案したファジィ推論を用いた審美性評価スコアがマップ上で滑らかに変化することを確認した.これは術前の症型分類が審美性評価の分類と類似していることを意味し,審美性を検討するのに非常に有効である.硬組織移動量も同様に自己組織化マップを用いて2次元マップに写像した.術前症型分類マップを観測することで,類似症型が容易に検索でき,それらの患者に対してどのような硬組織移動量を施した場合に審美性評価スコアが向上するかを知ることができる.16年度の成果を基礎に,17年度,18年度にかけて新規症例を追加し,類似症例を自動的に検索するグラフィカルデータベースの作成(第63回日本矯正歯科学会大会にてプロトタイプを発表した),および側貌の審美的調和および術後安定性を考慮した手術計画を提案するシステムを開発する予定である.
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