研究課題
基盤研究(C)
喫煙は歯周病のリスクファクターの1つである。その病因の1つにニコチンによる末梢血管の収縮が挙げられている。ニコチンは喫煙により歯肉もしくは肺から取り込まれるため、歯肉に直接作用しているだけでなく、全身や脳内のニコチンレセプターに作用するものと考えられる。そこで、ウレタン・αクロラロース混合麻酔下のWistarラットにおいてレーザードップラー血流計を用いてニコチン脳室内投与による歯肉血流(GBF)の変化を測定した。昨年度からの実験を継続して行った。ニコチン脳室内投与によるGBFの変化は、コントロール群(生理食塩水脳室内投与)と比べ有意な減少を認めた。また、この反応は濃度依存性であった。また、ニコチン投与後60分における視床下部(PVN・SON)および脳室周囲器官(SFO・MnPO・OVLT)のc-Fos陽性細胞の数は、コントロール群と比べ、有意に多いものであった。次に、ニコチン脳室内投与(50μg)におけるGBFの測定時に、右側大腿動脈から血圧(BP)を同時に測定した。その結果、ニコチン投与群におけるBPの変化は、コントロール群と比べ有意な低下を認めた。そこで、GBFとBPの変化から歯肉血管コンダクタンス(GVC)を計算した。ニコチン脳室内投与により、GVCの有意な低下を認めた。さらに、ニコチン脳室内投与におけるGBF・BP・GVCの変化は、ニコチンのアンタゴニストであるヘキサメソニウムのニコチンとの脳室内共投与により抑制された。以上の結果より、中枢におけるニコチン刺激は歯肉血流の減少を引き起こし、その反応の一部は歯肉の末梢血管の収縮によるものであることが示唆された。さらに、SFOニューロンに対するニコチンの効果を電気生理学的に検証した。ニコチンもしくはアセチルコリンの投与によって、SFOニューロンは興奮性の反応を示し、その反応はヘキサメソニウムによりほぼ完全に抑制された。また、脳スライス標本および単離標本を用いて、SFOニューロンに対するニコチンの作用機序について調べている。
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