研究概要 |
今回の実験の目的は、現在慢性歯周病の原因菌として最も重要とされているレッドコンプレックスを構成するPorphyromonas gingivalis(Pg),Tannerella forsythia(Tf)、Treponema denticola(Td)の3菌種と侵襲性歯周炎の原因菌として重要視されているAggregatibactor actinomycetemcomitans(Aa)を細菌学的なリスクファクターとして、歯周組織の状態と各細菌の動向をモニターし、その有効利用について検討することである 昭和大学歯科病院歯周病科に来院し、細菌検査に関して同意を得られた歯周病患者に対し、初診時、スケーリング・ルートプレーニング(ScRP)直前、ScRP1カ月後、ScRP2カ月後に歯周ポケット内(罹患部位と対照部位)の歯肉縁下プラークを採取し、Real-Time PCR法にて各種細菌の有無と総菌数に対する割合を検査した。同時に同部位における歯周ポケット(PPD)、アタッチメントレベル(CAL)、プロービング時の出血の有無(BOP)、プラークインデックス(PI)を測定し、歯周組織の状態と細菌の動向について統計学的に検討した。 慢性歯周炎患者(CP)の罹患部位を侵襲性歯周炎患者(AP)の罹患部位と比較すると、臨床症状は統計学的に有意差が無いもの(CPのPPD6.9±0.9mm、APのPPD7.0±1.8mm)、レッドコンプレックスの割合は高い傾向にあり、特にTfは統計学的に高かった(CP:16.28±26.03%、AP:3.65±6.63%)。CPにおいてAaは皆無だったが、APにおいては3人にAa陽性患者がいた。ScRP後は歯周病原性細菌の割合は減少したが、PgはScRP後も検出される率が高く、初診時とScRP後において統計学的有意差は認められなかった(3.68±4.61%から1.86土4.16%)。それに対し、Tf(9.18+18.34%から0.82+1.84%)とTd(0.98±1.85%から0.00±0.00%)は有意に減少し、特にTdはポケットが浅くなるとほとんど検出されなかった。 個々の患者によって歯周病原性細菌の動向は違うが、細菌検査を有効利用することによって抗菌薬の併用を含めたFull Mouth Disinfectionの導入など、治療計画の立案やメインテナンスの間隔の決定などに応用可能であると思われる。
|