研究概要 |
ストレスは,歯周病のポテンシャルリスクファクターとされ,その関与が示唆されているが,作用機序の詳細については不明である.我々は,ラットストレスモデルを使用して,種々の研究を行い,歯槽骨周囲の細胞に発現している神経ペプチドの1つであるサブスタンスP受容体に対するmRNA発現を検出した.これにより歯周病の歯槽骨吸収においても神経ペプチドが関与していることが示唆されたが,歯周組織局所に放出される神経ペプチドは1種類ではなく,ダイナミックに変動する各種因子の遺伝子発現を捉えるために,マイクロアレイを使用して網羅的に検討することを本研究の目的としている. 今年度は目的を達成するために以下の研究を行った.すなわち,実験動物として,ウイスター系ラットを使用し,ストレス負荷群,非ストレス負荷群の2群に分けた.全身的には連日夜間12時間拘束ストレスを与え,局所的には臼歯部にナイロン糸を結紮する方法で実験的歯周炎を惹起させた.2,4,6,8,10日に動物を安楽死させ,摘出した頬側歯肉,口蓋側歯肉からtotal RNAを抽出して蛍光標識化したcRNAを合成し,マイクロアレイにて競合的ハイブリダイゼーションを行い,実験期間中の歯肉の遺伝子発現パターンを解析した. その結果,2日目の頬側歯肉ではサブスタンスPをコードする遺伝子であるTAC1(4.6倍)が強発現しており,その他にもストレスに関与するMucin19(9.5倍),glycoprotein GP2(3.9倍),tescalcin(2.5倍),trans-golgi network protein1(2.4倍),parvalbumin(2.0倍)が発現し,ストレスの歯周病局所への影響の一端が見えてきた.今後,すべての実験期間における遺伝子発現を解析し,各遺伝子の時間的変動も含めてさらに詳細な遺伝子解析を行う予定である.
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