本年度は歯周臨床情報を動画像として一括収集し、測定対象となる静止画像を抽出する方法の確立と、画像を数値化した情報と視診で得られる情報との誤差を減少させる方法を検討した。口腔用小型CCDカメラを用いて撮影した歯周診査部位の動画像を、リアルタイムで解析用コンピュータに取り込めるように、画像入力ボードの環境設定を行った。静止画像として取り込む速度(フレーム数/秒)は、歯周プローブの圧力調整バネが動く速度に応じて決定した。取り込んだ静止画像のうち、前歯部と臼歯部の頬側については、画像補正なしで解析可能な画像を得ることができたが、臼歯部の舌側と口蓋側については明度とコントラストの補正が必要であった。静止画像を2値化して、歯周プローブのバネの位置が適正圧力を示す画像(対象画像)を抽出するための物体を検索したところ、対象画像には特異的な長方形物体が存在することがわかった。対象画像における歯周ポケットの深さは、申請者が開発した方法を用いて測定した。対象画像を抽出した時点で、歯周プローブの部分を明示することで測定時間を短縮できることがわかった。視診で得られる測定値との誤差を少なくするためには、画像撮影の時点で歯周プローブとCCDカメラのヘッドを平行に挿入する必要があることがわかった。歯肉の炎症状態を示す歯肉の色はRGB値に変換できたが、視診との誤差が大きかった。そこで、視診との誤差が少ない画像を選択し、これを基準としてヒストグラムを見ながら補正した。プラークの付着状態は、染色を行うと歯肉の色に影響を与えるため、歯面の光沢が少ない部分をプラーク付着部位として面積を測定した。これらの測定(数値化)のステップが多数の画像に適用できるかどうかを60名の画像で検証した。数値化した歯周臨床情報は、汎用の集計・統計ソフトウェアで利用可能なテキスト形式として出力できた。
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