研究概要 |
前年度は、東広島市ならびにその周辺地域の幼児を持つ保護者を対象に、プリシードプロシードモデルを基にした歯科保健モデルと地域における現状とのギャップについて検証した。プロシード部分について要因間の因果分析を行い、同モデルで有意性が確認できなかった2つのパス(「準備因子」→「口の健康」、「実現因子」→「口の健康」)で有意性が認められた。また、「環境」→「強化因子」へのパスの存在を確認した。「生活の質(QOL)」は「歯科保健行動」ならびに「準備要因」を強化することによって向上することが明らかになった。 本年度は、上記修正モデル(要因間の因果関係図)を使って、地域住民の口腔保健と地域保健活動をそれらの因果関係も含め視覚的に検討した。前年度の因果関係をもとに地域(A地域:保護者620名、B地域:保護者218名)間の口腔保健7要因の差を分析した(x^2検定)。その結果、B地域の保護者の47%が「みがき方の指導を特に受けたことはない」と答えていたのに対し、A地域では26%しかそう答えていないことが最も大きな地域差であった(p<0.01)。また、A地域の半数近くの保護者は「役場や保健センターは歯の健康教育に力を入れていると思う」と回答していたが、B地区では27%に過ぎなかった。さらに「強化要因」を構成する全ての項目で地域差が認められた。即ち、B地域に比べA地域の方がより強化された保健行動をとっていた。デンタルフロスの使用も少なかった(A地域;19%,B地域;13%,P<0.05)。「環境」、「強化要因」の2尺度および「デンタルフロス」以外の他の項目では地域差がほとんどなく有意差は認められなかった。以上の結果から、口腔保健7要因間の因果関係を重視した今回の地域診断によって、視覚的にも地域保健の問題点が把握されやすくなった。
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