歯肉上皮細胞における自然免疫に重要な役割を果たしていると考えらる抗菌ペプチドのうち、カテリシジンファミリーのCAP18/LL37の発現に与える歯周病原性細菌の機能的役割を詳細に明らかにすることを目的として本研究を実施した。 歯肉上皮細胞からのCAP18/LL37発現検索のためにCAP18/LL37の27残基からなる合成ペプチドを作成し、家兎をこれにより免疫することで抗血清を得た。この抗血清を用い、免疫組織染色ならびにウエスタンブロット法によりその発現を調べた。 結果:歯肉上皮細胞として用いたCa9-22は自発的にCAP18/LL37を発現していた。この細胞にインタクトなPorphyromonas gingivalisを添加し6時間培養したものではCAP18/LL37の発現が低下した。この低下現象はプロテアーゼインヒビターであるTLCK添加により回復した。一方、炎症性サイトカインであるTNF-αによりCa9-22を前処理したものにおいて、CAP18/LL37の発現が有意に促進された。これらの結果は、歯周局所における炎症性サイトカインが本疾患を進行させる役割とは逆に、自然免疫を誘導することで歯周病原性細菌の侵襲から生体を防御する機能を持つ可能性を示唆する。
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