歯科補綴治療における繁用材料としてのレジン、銀合金、パラジウム合金が、手指の接触のみによって十分DNA源と成り得るか否かについて、以下の方法により検討を行った。 i.レジン、銀合金、パラジウム合金を用いて0.5×0.5cmの実験的試料片を作製する。 ii.上記の試料片をDNAase、エタノールにて十分に処理・洗浄後、異なる圧接力にて指示指を圧接し、これを試料としてフェノール/クロロホルム法によるDNAの抽出を試みる。 iii.吸光度上10ng以上のDNAが得られた試料に対して、Amelogenin遺伝子領域を対象とした性別判定を試みる。 上記の検討から以下の結果が得られた。 i.レジン、銀合金、パラジウム合金各20片の試料、計60例のうち、半数の30例において吸光度上10ng以上のDNAが得られた。 ii.本研究においては、上記試料の材質とDNA抽出量、ならびに手指の圧接力および圧接時間とDNA抽出量の間に相関関係は見出せなかった。 iii.得られたDNAは、シークエンスの結果、全例において手指の圧接者のDNAであることが確認され、Amelogenin遺伝子領域を対象とした性別判定も全例において明確に判別可能であった。 尚、次年度からの研究に使用する実際に口腔内に装着されていた歯科補綴物の収集に際して、各地域歯科医師会、歯科医院等への研究協力の依頼を行い、数地域より受諾の意向を受けた。
|