前年度の研究より、手指の接触によっても、吸光度10ng以上のDNAが得られる場合があると判明し、さらにこの場合、シークエンス検査の結果、全例において手指の圧接者のDNAであることが確認された。またAmelogenin遺伝子領域を対象とした性別判定も全例におて明確に判別可能であったことから、手指の接触はDNA分析に重大な影響を及ぼしえることが明らかとなった。 本年度は上記の結果を踏まえ、影響を受けるDNA分析手法を明確にするために、以下の研究を実施した。 i.mtDNAシークエンス既知の女性手指をあらかじめ圧接した試料片を用い、これにmtDNAシークエンス既知の男性手指を圧接して、性別判定およびシークエンシングを行う。 ii.D4S43 locusにおけるVNTRの変異を検索し、既知の結果と比較して、分析が正確に行われたか否かを判定する。 上記により、以下の結果が得られた。 i.性別判定では女性との判定しかできなかったものの、両者の塩基配列が見出された。 ii.ラダー状もしくは両者のバンドが検出され、分析は困難であった。 今年度は上記と平行し、実際に口腔内に装着されていた歯科補徹物の収集に努めたが、やはり困難な部分も多く、協力者のものに直接足を運びご理解頂くことが肝要と再認識した。
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