本年度の研究は以下のように実施した。 1.市区町村での成人歯科保健事業との禁煙支援との関連に関する状況を全国的に把握するために、平成14年度の老人保健事業の実施状況などの厚生労働省の公表データを基に、成人に対して歯周疾患対策の事業を行っている市区町村でかつ禁煙支援を行っている市区町村調査を先年度から引続き実施した。アンケート回収率は77%であった。調査結果より、歯周疾患に関する保健事業と禁煙支援事業が全体では40%程度が同時に行われているのではないかと推定された。また、自治体が大規模であるほど、禁煙と歯科保健を関連させた事業を行なっている傾向がみられ、保健所設置の市区では60%を超えていた。内訳では、歯周疾患検診時の禁煙教育・指導・支援が全体で約30%であったが、大規模な自治体では50%前後であり、比較的良く行われていることが伺われた。 両事業が同時になされている自治体では、喫煙状況を76.2%が聞いているが、喫煙状況の集計結果をだして把握している自治体はわずか18.8%であった。歯周疾患検診時の禁煙教育の実施率は、全体で39.9%であったが、他の問と異なり、類型間であまり差が見られなかった。 2.市区町村での成人歯科保健事業と禁煙推進の連携での問題点が、1.の分析により、いくつか見えてきたので、その対応を含め、専任の歯科保健職種がいなくても実施できるように、市区町村の現場にいる保健職種向けの「歯科保健指導と禁煙支援の連携マニュアル」を作成した。さらに、喫煙状況を問診のみに頼ることなく容易に把握できるように「呼気中CO濃度」の測定を応用することも、本マニュアルに記載した。このマニュアルを、数箇所の自治体で、試験的な応用を開始している。 また、これとあわせて、喫煙状況などの採取したアンケート成績を容易に集約し、その後の市区町村での健康事業に応用できるようなシステム構築をも考案し、一部の自治体で開始した。
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