研究概要 |
実際の身元不明死体の歯から正確に年齢を求めるには、鑑定資料と同一歯種で年齢既知の歯を対照歯として数本必要である。しかし、年齢既知の歯を常時保管しておくことはかなりの負担である。これを解決するために、対照歯に代わる各歯種別、年齢別のラセミ化率を得るための対照試料を作製した。対照試料は歯種別(4歯種)、年齢別(6段階)に求め、最近鑑定した中切歯12件(63歯)、側切歯12件(73歯)、第一小臼歯9件(53歯)および第二小臼歯10件(57歯)、合計43件(246歯)の鑑定例に供した歯のデータを基に求めた。中切歯の場合、平均の検量線稜線(速度式)はy=0.001216x+0.0382(y, ln[(1+D/L)/(1-D/L)]、x,年齢)である。20歳の場合は、xに20を代入すると、yは0.06252となる。そこで、市販のL-Asp1000mgに対しD-Asp62.52mgを測り混合し対照試料とする。同様にD-Aspは30歳では74.68mg、40歳では86.84mg、50歳では99.00mg、60歳では111.16mg、70歳では123.32mg加え混合する。対照試料は0.5M HCl50mlに混和し保存する。HClに溶解した対照試料20μlをバイアル試験管に入れ、窒素通気でHClを除去(約5分)し、さらに真空除湿(10分)し通法に従い分析した。また、加水分解時に増加したラセミ化率を減算(0.0035)し求めた。その結果、実際の年齢鑑定2例に用いたが、ほぼ正確に年齢を求めることが可能であった(現在、この論文を米国の雑誌に投稿中である。)。
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