研究概要 |
地域性の異なる3地域のう蝕罹患状況とう蝕要因との関係を明らかにするためにPRECEDEモデルに基づく調査票を作成し、調査および統計学的解析を行った。結果、全体で460名の3歳児のデータを得ることができた。う蝕の有病状況では、1人平均う蝕経験歯数(dft)で、1.33,2.27,2.59と差はあるものの良好な状況であった。しかし、Caries Freeが60%以上である一方で、全体の10%の幼児が全う蝕の50%以上を保有しており、う蝕有病状況の格差が顕著になってきている。また、3地域において、家族構成や保育担当者などの環境要因に差違が見られるが、保健行動、準備、強化、実現などの要因に大きな違いは認められなかった。しかし、各地位における保健指導の重点項目の違いにより差が見られる項目もあった。過去において強いう蝕発生要因と考えられていた授乳や間食などの要因が、明確なう蝕発生要因として影響していないことが3地域に共通していた。しかし、スポーツドリンクの頻回摂取は依然う蝕発生に関与する行動要因であった。また、モデル全体を共分散構造分析で解析したが、PRECEDEモデルを構成する各要因間の関連性は強くなかった。 全地域に共通するう蝕要因の特定は困難であり、大きな集団において重点的な保健指導項目を決定しう蝕予防を実行していくことの効果は減少する。つまり、本研究によってう蝕要因は多様化し、個別化する傾向にあることが示された。今後、PRECEDEモデルなどを用いて、より早期にハイリスク幼児を総合的に診断し、個人ごとにかかえる歯科保健問題に対応した健康教育プログラムを実践していくことが重要であることが示唆された。
|