研究概要 |
A.吸引圧の相違による粘膜への影響の検討 深麻酔下で致死させた直後の動物の気管を摘出し,気管を正中線上に切開した後,3孔中2側孔を塞いだカテーテルの先端開口孔を粘膜に当て静止し,吸引した.吸引した部位は病理組織学的検索を行なった. 1)ラット気管を用いた吸引実験 吸引は,圧200mmHg,300mmHg,400mmHg,500mmHgでそれぞれ2秒間と8秒間を実施した.500mmHgで8秒間実施した吸引において,広範囲に基底膜まで達する剥離が認められた.300mmHg,400mmHgでは限局して基底膜まで達する剥離が認められた.同じ圧力では,2秒間より8秒間の吸引の方に粘膜損傷の程度は強く認められた. 2)ウサギ気管を用いた吸引実験 吸引は,圧200mmHg,300mmHg,400mmHgでそれぞれ2秒間と8秒間を実施した.微小な表皮剥離は認められたが,基底膜まで達する損傷は認められなかった. 本実験条件下では,動物種の相違によって気管粘膜への影響が相違することが考えられた. B.カテーテルの回転による粘膜への影響の検討 Aと同様の方法でウサギ気管を切開した後,カテーテルの孔を軽く当てた.この状態でカテーテルを回転させた場合を想定し約15mmの気管粘膜上を2秒間一方向に静かに動かした.吸引圧は,A.2)と同様の圧で吸引した.同じ吸引圧では,静止した場合と比較して損傷の程度が強く,400mmHgでは広範囲に基底膜まで達する損傷が認められた.以上から,粘膜損傷には,吸引圧の他にカテーテルの動きが影響し,カテーテルを動かすことにより粘膜損傷が起こりやすいと考えられた. C.カテーテル孔の吸引圧の測定 3孔式カテーテルの1孔に圧測定器を接続しその孔の圧を測定した.53.3kPa(400mmHg)の設定圧では,1孔のみと2孔を塞いだ場合のそれぞれの孔にかかる吸引圧は,いづれにおいても10kPa以下であった.
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