研究概要 |
本研究では、転倒に関連した看護師自身の臨床経験が、転倒リスクマネジメント能力の育成にどのように関連しているかを明らかにし、この結果をもとに看護師の転倒リスクマネジメント育成プログラムを開発することをめざしている。 Kolb.Dは経験学習を具体的経験により知識が創出されるプロセスとして定義しており、知識や技術の獲得過程で「経験」が中心的な役割を果たすと指摘している。また、Kilpatrick.W.Hは経験が教育的なものである時、洞察力、理解力、統制力に変化が見られると指摘している。よって、転倒リスクマネジメント能力は臨床経験を重ねることにより形成されると考え、以下の調査を実施した。 転倒ハイリスク患者の看護経験を有する2年目看護師19名を対象に、入院患者の転倒防止に関する認識や実施している対策及びこれらの認識や行動に影響を与えた事柄を面接調査し、質的に分析した。その結果、採用当初看護師は,転倒は重大なことではなく,発生しても仕方がない現象であり、具体的な防止策が分からないと感じていた。しかし、採用後1年間の中で体験した転倒場面への遭遇とその報告書の記載、先輩看護師の言動から,転倒発生の重大性を認識し,リスクの存在に関心を持ち、転倒を防止する責任を自覚していた.このことから、転倒リスクマネジメント能力の形成には,臨床で遭遇する転倒に関連した経験が大きく関係していることが示唆された.この結果を踏まえ、転倒に関連した臨床での経験がどのようにして転倒リスクメネジメント能力形成に関与しているかを明らかにするために、1年目看護師を対象に採用後6ヵ月目に面接調査を実施した。今後、採用12ヵ月後(2年目)に調査を実施予定であり、この調査内容と併せて転倒リスクマネジメント能力の形成における経験の構造を明らかしに、育成プログラム開発に結びつける予定である。
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