研究概要 |
「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会報告」によれば,看護師に求められる臨床実践能力の一つに転倒防止策の適用の判断と実践が示され、転倒リスクマネジメント能力を育成するプログラムが必要となってきている.このプログラムを開発するには,まず,看護師の転倒に対するリスクマネジメント能力の形成の構造を明らかにする必要がある。そこで,本研究では看護師が臨床場面での経験から,どのようなプロセスを経て転倒リスクマネジメント能力が形成されるかを明らかにし,この結果をもとに転倒リスクマネジメント能力育成プログラムを検討した。 本研究では新人看護師の転倒リスクマネジメント能力形成について、一総合病院の1年目看護師28名を対象に、就職後6ヵ月と12ヵ月目に半構成的面接法を用いてデータ収集を行い、エスノグラフィの分析手法を用いて分析した。その結果、転倒リスクマネジメント能力の形成は、6ヵ月では、「看護師は飛び込んできた情報から転倒を防ぐ方法」による防止活動と「転んだらただでは済まない」と感じる根拠が示す経験を通して、「自分はまだまだであると自覚する根拠」が示す能力の自己評価をしていた。このことから、「転倒させないための機能」を導きだし、これらを活用して「飛び込んできた情報から転倒を防ぐ方法」を実行することにより能力を形成していた。12ヵ月では、「転んだら責任が問われると感じる根拠」と「転倒を100%防ぐのは難しいと認識する根拠」が示す経験と能力の自己評価から、「ADLを拡大しながら転倒を防止するための機能」を導きだしていた。そして、これを活用し「患者の行動を想定しながら転倒を防ぐ方法」を実行することにより能力を形成していた。 以上の結果をもとに、1)就職後1年目(6ヵ月・12ヵ月)に新人看護師が自覚する能力の課題(転倒防止への姿勢、転倒を予測する力、防止策の決定と実行、協働)に対する介入方法、2)経験学習モデルを適用した4段階((1)経験の内容を明らかにする、(2)経験を振り返る、(3)看護師として転倒防止に必要な事柄を導き出す、(4)導き出された行動指針に基づく転倒防止活動と評価)による介入、3)看護師によるモデリングからなる教育的介入モデルを開発した。
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