今年度は、看護職者の雇用の多様化、特に派遣労働の現状とそれを支える組織に対する調査、人材を受け入れる病院の看護管理者に対するフォーカス・グループインタビューなどを行った。 まず、労働者派遣法の立法・改正過程、医療職者の紹介予定派遣制度導入の経緯を明らかにした。次に、病院の管理者に対する調査では、人材不足からすぐに任せられる即戦力となる人材が必要とされており、病院ではまさに派遣労働にそうした人材を求める傾向が認められた。一方、そうした人材の教育・育成が問題として残され、派遣会社からは看護職者の即戦力の足りなさを指摘する声が聞かれた。今後は、公共財としての人材育成のあり方が具体的に検討されること、また、派遣会社も登録者を病院に派遣するだけでなく、教育にも関わり労働市場に参入できる看護職者個人の能力開発と適切な配置を検討する必要がある。病院の人材不足は深刻であり、国内労働者だけでなく、外国人看護師を導入するという流れもある。看護職者の国際労働移動の専門家である、J.Buchan氏にインタビューし、同氏から外国人を一度導入すると、それが1つの対策と位置付けられ依存せざるを得なくなる問題が指摘された。ちなみにスコットランド看護協会では、国内養成と同時に外国人看護師の導入を看護の供給対策の1つとして位置づけている。わが国では、FTA交渉で、フィリピン人看護師の導入が概ね合意されている。しかし、本研究の調査では、外国人労働者の導入は、時間の問題としつつ、体制が整備されていない現状から、今すぐには導入できないとする意見が多かった。また、現在でも患者側からの苦情の原因が、コミュニケーションギャップによるものが多いことから、同じ日本人同士でもうまくいかないのに外国人ではなおさら難しいとの意見もあった。外国人看護師の導入には外国人看護師の意見も取り入れた受け入れ態勢の整備が不可欠である。
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