研究の目的は、仕事と育児を両立する過程における母親の葛藤・ストレスを明らかにし、そのモデルを作成することである。 研究成果の概要は以下のとおりである。 1.女性の仕事と家庭の両立に関する研究動向をまとめるため、医中誌WEBで抽出した1995年から2000年までの原著論文21件を分析した。研究の数は、2001年〜2005年に多く、当時、家庭生活・職業生活のあり方や男女の役割が大きく注目され、様々な施策が整備され始めたことが影響したと考えられた。また、研究による知見は、(1)働くことへの意識、(2)両立する上での葛藤や困難、(3)両立葛藤に関連する要因、(4)多重役割の関係性が心理的健康に及ぼす影響、(5)両立を可能にする要因、に区分できることが明らかとなった。 2.仕事と育児を両立する母親の葛藤やストレスの経験を明らかにするため、母親10名に対してインタビューを行った。質的分析法をもちいて分析した結果、「仕事を休むことへの葛藤」「夫のサポートについての苛立ち」「自分または子どもの体調不良や忙しさによるつらさ」「仕事を続けていけるかとの不安」「自分の持つ育児観との葛藤」「親や職場への気がね」の6カテゴリーが明らかとなった。 3.乳幼児を持つ働く母親の葛藤・ストレスおよびその要因を明らかにすることを目的として、公立保育園に子どもを預けている母親822名を対象に質問紙調査を行った。有効回収数は602(有効回収率73.2%)であった。フルタイムで働ける母親は、核家族世帯・三世代世帯に比べ、母子単独世帯では少なかった。母親のうち約9割は、親と同居または近くに住み、親を重要な育児の支援者として位置づけていた。また、就業を継続しながら乳幼児を育てる母親の葛藤・ストレスモデルを作成した。今後、さらにモデルの改善をめざした研究に取り組む予定である。
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