重症の先天性心疾患の児をもつ親は子どもの状態や疾患をあまり理解できないで、また親自身も不安定な状態で、子どもの早期手術に臨む場合が多々ある。さらに術後も継続的な治療・管理が必要であり、両親の心身の負担は極めて大きい。このような親の心身の負担を軽減することは、親のみならず、先天性心疾患を抱えた児自身にとっても重要な課題と考えられる。 本研究は親が子どもの先天性心疾患に対する手術に対してどのように思い、体験しているのかを明らかにし、術後の育児不安の軽減や親子関係の確立への、より適切な支援方法を確立し、臨床の場へフィードバックすることを目的とした。 岡山大学医学部・歯学部附属病院で加療中の重度先天性心疾患児の保護者を対象に半構成的面接法によりインタビュウを行い、得られたデータを解析した。尚、インタビュウのタイミングなど、十分な倫理的配慮を行った。 まず、わが子の病名告知と手術説明を受けた保護者のわが子の疾患・手術などの治療に対する「受け止め」について、一歳未満で手術を受けた子どもを持つ保護者40名を対象に検討を行なったところ、「受け止め」の構成要素として、「感情の摩擦」、「支え合いと希望」、「適応への行動」、「コミュニケーションの歪み」、「積極的な取り組み」そして「身体的な変化」が見い出された。これらのデータをもとにさらに保護者(特に父親)に対して体験や家族支援の関する質問事項に基づいたインタビュウを行ったところ、多くの闘病中のわが子を持つ父親は経済的に家族を支える為に、休むことが困難な仕事との葛藤と不安定な状況の中で、わが子の状態に関する十分な情報を得るすべも少なく、またわが子の予後や家族の将来への展望に対しての不安感にさいなまされており、かつ医療側からの父親自身に対する十分なケアが受けられていない状況が見出された。今後、これらの状況に対する社会や医療サイドの理解と支援対策が必要である。
|