研究概要 |
平成17年度の研究は,ストレス認知度と精神的健康度との相互関係を2時点の反復測定データを用いて検討し,因果の方向性を確認するとともに2変数間の影響力を検討することを目的として実施した。 初回調査時に縦断調査に同意の得られたCOPD患者(在宅で生活する)は126名であった。そのうち,追跡調査時点(12ヵ月後)に研究協力施設への通院を継続しており,調査の再依頼が可能で,2時点の反復測定データが得られた者は49名であった。分析には,2変数の双方向の影響を同時に推定できるSynchronous Effects Modelを用いた。 分析の結果,追跡調査時点においてストレス認知度は精神的健康度に有意な正の影響を与えていた(0.464,p<0.01)。これはストレス認知が高いことが精神的な健康状態の悪化を促進することを示す結果であった。精神的健康度からストレス認知度への有意な関連は認められなかった(-0.104,p=0.564)。横断データを用いた検討によって,ネガティブな認知(息苦しさや活動制限をどのように捉えているか)が精神的な健康に影響を及ぼしていることを報告していた(2002年)が,横断データでは,時間的な前後関係がないため,ストレス認知と精神的健康度との関係の因果関係は仮説の域をでないという限界があった。今回,2時点の反復測定データによって,ストレス認知度から精神的健康度の因果関係を確認し,その影響の強さは中程度であることを示した。これは,ストレス認知に着目することで,精神的な健康状態の悪化をある程度防ぐことが可能であることを裏付けるものである。 今後は,ストレス認知の変化が精神的な健康にどのように影響するのか,どのようなストレス認知にどのように対処することが精神的な健康と関係があるのか,について検討していく予定である。
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