研究概要 |
平成18年度の研究は,どのようなストレス認知に対して,どのように対処することが精神的健康と関係があるのか,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者におけるストレス認知と対処および精神的健康との関係を明らかにすることを目的として実施した。 対象はCOPDの診断基準を満たす107名で,平均年齢は71.7歳(SD7.7),男性91名(85.0%)であった。ストレス認知の測定には,「息苦しさや活動制限に対するネガティブな認知」を,対処行動には,3因子14項目の「COPD患者の対処行動」を,精神的健康の測定には「GHQ-12」を用いた。分析では,精神的健康を従属変数,ストレス認知×対処行動を独立変数とした2要因分散分析を行い(107名を,在宅酸素を使用している者34名とそうでない者73名に分け),ストレス認知と各対処行動("積極的対応","自己コントロール","病気の再解釈")の交互作用を検討した。 分析の結果,在宅酸素を行なっていない者ではストレス認知と病気の再解釈の交互作用が認められた(F=7.889,p<0.01)。これは,病気の再解釈にストレス認知を抑制し,精神的な健康の悪化を調整する効果があることを示す結果であった。在宅酸素療法を使用している者では,交互作用は認められなかったが,病気の再解釈の低い者は,ストレス認知得点の高低に関わらず,GHQ-12得点は高く,精神的な健康が阻害されている傾向にあった。以上の結果は,在宅酸素の使用の有無に関わらず,COPD患者の精神的な健康の維持に,病気の再解釈をするという対処行動が有用なことを示す結果と考えられた。本研究の結果は,患者が病気に対してどのような意味づけをしているかということに着目し,看護介入していくことで,COPD患者の精神的な健康をある程度維持することが可能なことを示唆しているものと考えられた。
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