目的: ワーキングマザーの授乳の問題点を明らかにし、母乳栄養継続と乳腺炎予防のための看護ケアついて、細菌学的および分子疫学的な視点から検討する。 方法: 1.対象;ある病院で分娩予定の就業と非就業の女性 2.データ;自記式質問紙(授乳や手洗いの状況など)・鼻前庭と乳輪部からの細菌検体 3.データ採取;分娩退院時(退院時)、産後1カ月時(1ヶ月時)、産後3カ月時(3カ月時)の縦断調査 4.分析;質問紙は、有効回答についての統計学的な分析。細菌検体は、Staphylococcus aureusの同定・薬剤感受性試験・Pulsed-Field Gel Electrophoresis(PFGE)による分子疫学的検討。 結果と考察: 1.母乳栄養継続の希望は、退院時は就業者のほうが有意に継続を希望する月数が少なかった。就業者は、職場復帰を考え、母乳栄養を長く続けることが難しいと考えていることが推測された。 2.退院時は手洗いが必要と考えられる場面では、汚れの有無に関係なく高い実施率で手洗いを実施していた。しかし、経過とともに、目でみた視覚的な汚れの場合に手洗いをする者が増加した。手洗いは、感染性乳腺炎の重要な予防対策であり、退院後の母親への手洗い指導について、今後検討していく必要性があると考えた。 3.S. aureusの保有率は、鼻前庭部、乳輪部とも経過とともに増加した。鼻前庭部は、退院時18.2%が、1ヶ月時40.0%、3ヶ月時45.5%に増加した。今後、1カ月時の保有率の激増には、どのような要因があるか検討する必要がある。PFGE結果から、分娩日より病院内でお互いに接触した可能性が極めて低いと考えられる2症例から、遺伝的に同一のMethicillin-sensitive Staphylococcus aureusが分離された。伝播には医療従事者、医療器具、第三者が介在した可能性が示唆された。
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