本研究は、在宅移行期にある慢性疾患を持つ子どもが自律に向かうための支援を子どもと家族に向けて行えるプログラムを作成することを目的としている。本年度は、慢性疾患の子どもと家族の在宅療養移行期の体験、日常性の獲得および自律過程とその要因を調査により明らかにすることにあった。 調査は、現在訪問看護を受けて在宅療養をしている子どもの家族と子どもで、研究の承諾を得られた10家族を対象とした。理由として、特に在宅移行の過程において様々な困難があり、試行錯誤が大きい状況である家族の経験を知ることで、支援への示唆を得られると考えたためである。 対象へは、半構成的面接調査を実施し、退院から在宅療養上家族や子どもが落ち着いてきたと思われた時点までの体験を語ってもらうようにした。子どもには可能であればどんなことが自分でできるようになったかについて質問した。所属機関の研究倫理審査を受けた。 現在調査分析を進行中ではあるが、おおよそ以下のようなプロセスがあった。 (1)在宅移行初期は<混乱しながら子どもの命を守る生活>と言え、病院での指導を手がかりにするものの、指導にないことが山積する現状に愕然としながら無我夢中で子どもの生命を守る生活であった。子どもの多くは『身体的調整の困難』や『家庭療養になじまない』状態にあり、支援の必要性は情報提供と適切な判断と在宅療養に即した「指示」にあった。(2)<家族の生活を安定させるための調整の模索の生活>に移行すると、子どもは『なんらかのパターンによる落ち着き』『家族との生活に反応していく』といった状態となった。支援の必要性は判断の補助や模索の協力といえた。(3)<家族自身が自らの状況にあった生活の調整を行う>段階では、必要な支援を選択する手立てをもつようになっており、子ども自身も『自分なりの生活の仕方をつくり、できることを行う』という段階に入っていた。必要な支援は選択可能な情報提供と家族の療養方法の保証であった。 来年度は、今年度十分なデータを得られなかった子ども自身への調査を加えた上で、子どもの自律支援にむけ看護支援プログラムの作成をめざす予定である。
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