本研究は、在宅移行期にある慢性疾患を持つ幼児期あるいは学童前期の子どもが療養行動を自律的に獲得していくための看護支援のためのプログラム作成を目的とした。 平成16年度は、在宅療養をしている子どもの家族10例のインタビューを実施し、慢性疾患を持つ子どもの在宅療養移行期の家族の体験の過程を分析し、在宅移行期にはどのような支援を行うべきかの示唆を得た。この結果、在宅初期の混乱の時期では、家族には指示的支援が適切に働くこと示され、「子どもの力の発見と、子どもの力が発揮するための道筋を示す」ことが必要とされた。家族自身が調整を模索する時期には、家族の判断力のサポートと、「社会に子どもや家族が積極的に出られるための情報提供」が重要であった。家族自身が自らの状況に合った生活の調整を行なう時期では、家族に選択可能な情報提供や家族の療養行動を保証すること、および「社会との関わりを具体的にし、拡大する」支援が必要だと考えられた。 平成17年度は、子どもの自律的な療養行動獲得とその援助の現状、また幼児期からの療養行動獲得の条件について、慢性疾患の子どもの退院、在宅療養支援に関わる看護師の面接調査により明らかにすることとした。関東近郊の小児専門病院および訪問看護ステーションに依頼し、看護師16名に面接を実施した。この結果、幼児期からの療養行動獲得への支援を実施する際の判断基準、療養行動を獲得のための支援方法を明らかにし、最終的に幼児期からの自律的な療養行動獲得のプログラムのヒントを考察した。この中では、幼児期から療養行動の獲得を計画する際のアセスメント(子どもの準備状況、家族の準備状況、子どもとの関係性、周囲の受け入れ状況、子どもの療養行動獲得への外的要因、獲得する療養行動の性質)や、子どもに支援を実施する際のポイントを検討した。退院前から退院後の家族の段階に合った支援のポイント、子どもが自律的に療養行動を取り入れるための指導のステップ、コミュニケーション、子どもの自律の意識化、家族への意識づけ、パターン化の方法、危険の回避などについて示している。 今回のプログラムへのヒントは・今後の具体的な疾患での研究に生かすものとして位置づけた。
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