研究課題
今年度は、平成17年度に実施した調査(質問紙調査、対象施設数28施設、対象者数882名)の分析を進め、その結果、「看護師が倫理的問題を体験する頻度」として高い項目は、家族の高齢化や核家族化、家族の希望、家族の病気理解の不十分さ、社会資源の不足、病状の重さによる退院の困難さ等であり、低い項目は、人手不足や病棟文化等による拘束の延長等であることが明らかとなった。また「看護師が倫理的問題を体験する頻度」の合計得点と属性との間に有意な関連がみられた項目は、免許、病棟の措置入院患者の受け入れの有無、病棟の夜間や休日の入院患者受け入れの有無、病棟の開放度であった。因子分析の結果、「看護師が倫理的問題を体験する頻度」は<職場環境>、<強制治療>、<看護師の責任と感情>、<チーム医療>、<退院と意思決定>、<病名告知>の6因子による構成が示された。さらに「看護師が倫理的問題を体験する頻度」の合計得点とバーンアウトには有意な関連がみられた。また米国における精神科看護倫理教育の専門家(Douglas Olsen博士)を招聘し、教育講演(院内教育とオープンレクチャー各1回)を開催し、精神科看護倫理教育を実施した。参加者への質問紙調査の質的な分析を行い、参加者から精神科看護倫理の教育講演が「学びや理解、再認識、気づき」「振り返る機会、考える機会」等になったという意見が多く、また今後教育や臨床現場で「倫理的思考・行動を獲得」「倫理的ケアのための検討」について取り組みたいということが明らかになった。以上の結果から、わが国における精神科看護師が臨床で体験している倫理的問題の実態を明らかにすることができ、また臨床現場や教育現場における「精神看護倫理教育」の必要性とその内容について明らかにすることができた。
すべて 2006
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東京女子医科大学看護学会誌 1巻1号
ページ: 45-52