本研究の目的は、母子同室の母親に対して、産褥早期に行なう癒しケアが、疲労回復や円滑な母乳育児を促進する効果があるか否かを検証することである。 研究デザインは準実験的研究デザインで、対象は完全母子同室制の産科施設で経膣分娩した母親で、便宜的に介入群80名と対照群71名に割付けた。介入群には、癒しケア介入として、産褥1日目夕刻に癒しケア(リラクゼーションケア)を行い傾聴的に接した。対照群には、従来通りのケアを提供した。 疲労に関する指標は、【疲労蓄積度自己診断チェックリスト】、【エジンバラ産後うつ病評価尺度】、【自覚的な睡眠時間】とし、産褥1日目と4日目に自己記入式調査票を用いて調査した。母乳育児に関する指標は、産褥2日目と4日目の授乳回数、退院時および一ヵ月時の栄養法とした。分析は統計ソフトSPSS-PC Ver.12を用いて記述統計と各調査項目の2群間の差の検定を行なった。倫理的配慮として、対象に研究の主旨や方法について書面および口頭で説明し、研究協力の承諾を得た。また守秘義務の行使、研究協力の任意性、研究協力の有無により不利益は被らないこと等を説明し遵守した。 その結果、疲労に関しては、介入群と対照群を比較すると【疲労蓄積度】、【EPDS】ともに産褥1日目では対照群に比べて介入群が有意に高く、産褥4日目では両群に有意な差を認めなかった。また、【自覚的な睡眠時間】は両群に有意な差を認めなかった。次に、群毎に産褥1日目と4日目を比較すると、対照群では産褥1日目に比べ4日目の【疲労蓄積度】、【EPDS】が有意に高かった。介入群では、産褥1日目と4日目で有意な差は認めなかったが、【EPDS】は産褥1日目よりも4日目のほうが低くなっていた。また、【自覚的な睡眠時剛は産褥1日目と4日目で有意な差を認めなかった。 また、母乳育児に関しては、介入群および対照群の産褥2日目と4日目の授乳回数、退院時の栄養法は、両群間で有意な差を認めなかった。一ヵ月時の栄養法は、介入群に母乳栄養者の割合が多かったが、有意な差を認めなかった。
|