研究概要 |
脳血管障害発症直後患者と家族は,合併症や後遺症への不安,生活の再構築への不安に加え,在院日数短縮化の流れの中で早期から次なる療養の場の決定を求められ,多くの場合「不安と混乱」の中にある.(2004,梶谷) 脳血管障害,介護者,ケアニーズ,退院調整,家族看護をキーワードとして原著論文を中心に過去10年間の文献概観を行った.欧米では脳血管障害患者と家族に対して退院に向けた支援プログラムが,早期から組織的に展開されていた.一方我が国では,看護介入研究としては事例研究が主であり,組織的なプログラム立案や実践・評価については今後に期待されている.在宅療養における患者と家族の心理やQOLに関する研究では,患者のADL状況もさることながら患者のうつ状況や痛み・不安の増大などが,介護者のストレスをも増大する報告がなされていた. 平成16年度は,脳血管障害発症後の混乱期にある患者と家族5事例に対して,発症から間もない時期の家族機能の現状把握とケアニーズについてインタビューし,結果を質的に分析した.患者と家族は,状況が変化することにタイムリーで詳細な病状説明を受けることで今後の療養生活への「見通し」をつけることができていた.混沌とした中で患者と家族が「見通し」をつけることができる介入が重要であり,医療者の一貫した態度や姿勢が信頼感にもつながり「見通し」をつける際の重要な裏づけになっていた. 平成17年度は,脳血管障害発症後リハビリテーション期にあるもしくは退院を前にしている状況の患者6名と介護者6名に,介護を受けることや介護をすることについて,今後の生き方,医療者への期待等についてインタビューを行った.インタビューはカウンセリング技法を活用しており,同時に看護介入ともなる.発症直後の混乱期にある患者と家族は,この介入により自分たちのおかれている状況を客観視し問題状況の整理をする上で,効果的な支援につながっていることが患者と家族の言葉から明らかにできた.
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