1.平成16年度 研究目的は、農村部の一人暮らし高齢者における自立の意味を明らかにするとともに、今後の支援のあり方の示唆を得ることである。研究対象は、国内1農村の一人暮らし高齢者16名ならびに同地域の専門職10名であり、研究方法は、ミクロエスノグラフィーである。研究の結果、農村部における一人暮らし高齢者の自立とは、<自己の尊厳を保持すること>および<可能な限り地域と共生すること>であり、また、前者には「自己決定を行うこと」、「生計を維持する自助努力を行うこと」、「一人暮らしに足る心身を保つこと」が、また後者には「むら文化を規範化すること」、「居住する集落環境に適応すること」の意味が各々抽出された。農村部の一人高齢者の自立支援に向けては、これらの意味の理解の上に、地域の特性も勘案した方略の開発が必要である。 2.平成17年度 研究目的は、都市部の一人暮らし高齢者における抑うつ傾向のprevalenceを把握するとともに、関連要因を明らかにすることである。研究対象は、東京都A区の一人暮らし高齢者250名であり、研究方法は、無記名自記式質問紙調査である。研究の結果、抑うつ傾向のprevalence(Geriatric Depression Scale-15)は43.6%であり、「独居期間」(p<0.0254)、「要介護度」(p<0.0018)、「ソーシャルネットワーク」(p<0.0001)との間に有意な関連があった。すなわち抑うつ傾向が高いことと「独居期間が短いこと」「要介護度が高いこと」、「ソーシャルネットワークが小さいこと」が有意に関連していた。都市部一人暮らし高齢者に応じた抑うつ傾向の予防を含めた自立支援プログラムの検討が必要である。
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