研究概要 |
平成17年度は,妊娠を契機に禁煙した女性が出産後まで禁煙を継続できる要因を探索するために,平成13〜15年度科学研究費助成研究に協力を得た対象者の内,(1)妊娠を契機に禁煙した経験のある女性43名を出産後までの禁煙・喫煙状況別に群別し,たばこに関する自由記述に基づき「たばこに対する思い」について因子探索的に分析した。また,(2)妊娠が判明しても喫煙を継続した女性12名を対象に,同様に分析した。さらに,(3)妊娠前の喫煙経験者で,妊娠・出産・育児を経験した女性3名にインタビューを行い,(2)の分析結果を検証した。その結果,出産後まで禁煙を継続した女性の特徴として,「子どものため,自分のため,他の人のために喫煙はやめるべきである」という規範的意識と,「出産後のいたずら喫煙,育児の負担がなければ喫煙しない」という将来の再喫煙を避けるための対策に関する因子が抽出された。これに対して,妊娠中・出産後再喫煙した女性では,「また吸ってしまうかもしれない」という再喫煙の予感,「止めたいが止められない」という禁煙困難,「禁煙は考えていない」という無関心の因子が抽出された。「子どもと喫煙」に関するラベル数の割合が,禁煙継続群は喫煙再開群よりも明らかに高く,PRECEDE PROCEEDモデルの「実現要因」である喫煙環境への対策に加えて,「前提要因」である「喫煙による子どもへの影響の認知」を高めるために,「強化要因」である医療関係者の役割の重要性が示唆された。次に,インターネットを活用した女性の禁煙支援の効果を分析した。ホームページ上に,たばこに限らず自由に思いや意見を書き込むことができる「日記の部屋」を作成したところ,継続的に書き込みをしている参加者は時間の経過とともに減少するが,高い禁煙成功率であることが明らかとなった。また,看護職者から支援を受けた参加者が,別の参加者の禁煙を支援しており,ピア・サポートグループへと成長していることが示唆された。同時に,参加者には常に動きがあり,ネット上のグループダイナミックスによってはネガティブな影響も否定できず,看護職者の介入のあり方が課題である。
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