研究概要 |
本研究は、人工呼吸回路による長期在宅呼吸管理を必要とする患者の感染管理システムを構築することを目的とした。研究期間内における研究目標に対する研究成果の概要は以下のとおりである。 1.在宅療養患者環境の細菌学的検討およびケアの実態と問題点の抽出:人工呼吸回路により在宅呼吸管理を必要とする患者38名に対する感染管理の実態調査および、気管内吸引関連物品の細菌学的検査を行った。介護者の気管内吸引に関する感染管理方法はさまざまで、一般に推奨されている清潔手技を守っていない者が多かった。気管内吸引カテーテル(以下、カテーテル)付着生菌数は,ゴム製カテーテルよりポリ塩化ビニール製の方が有意に少数で,分離菌のほとんどは,グラム陰性桿菌であった。エビデンスに基づいた感染管理教育の必要性が示唆された。 2.感染対策ガイドラインの作成およびその適用と評価:エビデンスに基づいたガイドライン作成にあたり、検体の形態学的・細菌学的検討を行い、ガイドラインの概略を以下のとおりとした。(1)再使用するカテーテルはポリ塩化ビニル製とする。(2)カテーテルは滅菌蒸留水を吸引した後、気道分泌物を吸引する。(3)分泌物吸引後のカテーテル外側はアルコール綿で清拭する。(4)カテーテル内の分泌物は、100ml以上の水道水で洗浄する。(5)カテーテルは消毒剤に浸漬保管する。なお、カテーテルと消毒剤は24時間毎に交換し、滅菌蒸留水は1回分(20〜100ml)ずつ小分けして使用する。 3.在宅ケア従事者に対する教育システムの構築:現在、感染管理ガイドラインを在宅ケア従事者に還元し、感染管理教育を実施した。また、患者の口腔内清浄度が低かったことから、安全で効果的な口腔ケアの研究が課題となった。
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