研究概要 |
平成17年度にA市在住の要介護認定を受けていない高齢者311人を対象に,「閉じこもり」に関する実態調査を行った。「閉じこもり」者は,77人(24.8%)であった。閉じこもりの要因として,日常生活自立度が低い,老研式活動指標が低い,交通便が悪い,外出に介助が必要,高年齢,高SDS,主観的健康度が低い,外出後の疲労感の8要因が認められた。単変量でみた場合,この他に閉じこもり群は膝や腰の痛みがある,頻尿や尿失禁の不安がある,視力低下,難聴,外出後の疲労感,羞恥心,転倒不安,趣味がない,友達が少ない,一人で食事,などがあがった。この結果から,加齢とともに身体的な衰えや健康に自信が持てないこと,家族や友人などの人的環境,交通機関などの社会的環境が誘因となり閉じこもる傾向があることが分かった。この結果より,「閉じこもり」予防,改善介入ポイントとして,身体的に(1)体力維持,心理的に(2)自己効力感の強化,社会的に(3)人と交わる機会をあげた。地域保健事業で多くの取り組みがされている中で,高齢者が身体的衰退を感じ,心理的・社会的には役割変化・疎外感等から自信を失い閉じこもることに対して,高齢者が社会の大切な一員であることを再認識し活動できる自信をもつことの重要性から,(2)自己効力感の強化プログラムに取り組んだ。具体的には,同意が得られた協力者16人にコーチング1回2時間を2ヶ月間に5回行い,実施前後でセルフ・エスチームとZUNGのうつ尺度の調査と参加に関する意見を聞いた。実施前後ともにデータが得られた者は7人であり,統計的処理はできなかったものの,うつ尺度は全員が改善した。セルフ・エスチームは実施後で得点が増した者4名,減じた者3名であった。参加に関する意見として,楽しかった,元気が出た,自信がついたが選択され,否定的意見を選んだものはいなかった。
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