研究課題
本研究目的は、産後の母親の退院後1か月間の育児を中心とした生活体験について明らかにすることである。対象者は、産後5日目と1か月時にEPDSを用いた精神状態の調査の結果、産後5日目には問題がなく、1か月時にEPDS9点以上でうつ状態と判断された母親。平成15年11月〜平成17年5月までの期間に、F市産科クリニックで出産した母親973名中、条件に合った母親は12名であった(出現率1.2%)。その内10名の母親に倫理的手続きを踏んだ上で半構成的面接をした。平均年齢31.2(24〜37)歳、初産婦7名。経産婦のうち2人目の出産2人、3人目1人であった。1名のみ帝王切開、他は自然分娩。重篤な産科合併症はなかった。児の異常もなく、全員1か月健診時に健康と判定された。面接の時期は産後1か月以降3か月以内であった。産後1か月間の育児能力を獲得していく過程において、母親が抑うつ状態に至り自信を喪失していつた体験と思いについて、インタビューデータをM-GTA法で分析した。分析の結果、12個の概念が生成された。育児に関して、<柔軟性に欠ける育児><一人で背負う><赤ちゃんとの応答性><赤ちゃんが不憫><育児効力感の喪失><育児能力の獲得><理想の育児><育児の重みづけ>が抽出された。生活役割として、<新しい家族生活の調整不全><パワーレス><守ることの重責感><自分のテリトリーを守る>が抽出された。中心的カテゴリーは、<育児効力感の喪失>だと考えられ、産後の育児を主とした生活への適応過程で、母親自身他に助けを求めない傾向にあり、又、助けにならない夫や実母の実態も見られ、産後1か月間は孤立した育児生活を送ることで、<育児効力感の喪失>が抑うっに至る過程に影響していた。今後は、新たな概念の生成と既出概念間の関係性について分析を進めることで、母親の育児効力感の変化のプロセスについて全体図を描いていく。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Kawasaki Journal of Medical Welfare Vol.11・No.1
ページ: 35-43
福岡母性衛生学会雑誌 15号
ページ: 19-23
第15回福岡母性衛生学会学術集会抄録集
ページ: 4