1.システム運用前後におけるスタッフの意識の変化を調べた結果、全体的にケアの統一性と継続性への効果が示された。その要因には、モニタリング会議における記録物の活用の実践を通じ、記録の必要性と有用性について認識が高まったことなどが挙げられる。 2.QOL-Dによって利用者を評価した。数名の利用者においてQOLの向上が示されたが、その効果の要因がシステムの運用の結果であることを説明できるまでには至らなかった。 3.利用者の日常生活の様子を、資料として家族に情報提供することで、システム運用前後における家族の意識の変化を調査した結果、全ての家族において、利用者に関する情報量増加と家族の安心感がシステムの効果として得られた。また、インターネットを活用して、利用者の日常生活の様子を把握した家族は、GHへの満足度や信頼度、利用者への思いの深まりおよび利用者の暮らしへの満足度において良い傾向が示された。 ただし、認知症高齢者をもつ家族にとって、GHへの感謝の思いが強く、入所出来ていること自体への有難さを強く感じていることが窺われ、今以上のサービスを求める傾向が少ない状況であった。利用者のQOLの向上を目指すためには家族も含めたケアが必要となるため、GH側からの家族に対する働きかけが今後必要となる。 4.記録の徹底と記録の活用を推進し、家族と意見交換の場を設けるなど、GH自身の積極的な取り組みが今後の課題である。また、システム導入にあたり、PC操作の習慣化や、入力および閲覧時間の確保、エラー時の対応などへの取り組みが課題である。 5.訪問歯科医との連携では、運用期間が短かったこともあり、口腔ケア指導の書き込み件数は少なかった。しかしながら、今後、連携を図るにあたり、提供データの種類や形式、口腔ケアとしての目標設定、ケア会議での評価等、関係者が意見を共有できる場の設定についての検討が必要であることが明らかとなった。
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