1 本研究は、非営利組織の理事や執行役員の行動基準について、非営利組織が構成される方式に依存することなく、その目的を達成するという観点から日本とアメリカの法制度を比較して、その内容を明らかにすることを目的としている。 2 行動基準は、理事や執行役員が負う義務として記述されるということができる。その義務は、非営利組織の法形式と切り離して見ると、大きく忠実義務と注意義務に分類して考察することができる。注意義務は事務を遂行するにあたり標準人が払う注意を払うことを求めるのに対し、忠実義務はもっぱら目的の実現のために利益を図ることを求めることから、非営利組織の理事や執行役員の行動基準を考える際には、その目的が適正に達成されるようにすることから利益の帰属を監視することになる忠実義務の果たす役割が大きいことが分かる。 3 本年度は、アメリカ法について、信託法に見られる忠実義務の内容とそのエンフォースメントを取り上げ、受託者という理事や執行役員と同様の位置にある者の行動基準について研究を進め、受託者がその任務遂行から利益を得ることを防止する仕組みとして忠実義務の働きを確認した。この考察の結果は「アメリカ法における受託者の忠実義務違反の判定方法に関する一考察」という論文に発表した。 4 本年度は、日本法について、本年成立した公益法人関連三法と呼ばれる3つの法律を取り上げ、一般社団法人と一般財団法人のガバナンスについて役員等の役割と義務を含めて考察し、一般社団法人法と一般財団法人法と会社法と対比した。
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