特定非営利活動促進法が施行されてから9年が経過し、法人数も3万弱を数えている。地方自治体においては、地方分権の流れの中で、多様な地域のニーズや価値観に対応することを目的に、市民参加とNPOとの協働の仕組みづくりと具体的な協働事業が進められてきている。そこで本年度も、昨年度に引き続きNPOへの委託事業を実施している地方自治体への聞き取り調査、および受託NPOへの聞き取り調査を実施した。また、委託事業の相互評価(地方自治体と受託NPO)を実施している地方自治体の公開されている資料の収集と分析を行った。さらに、地方自治体が作成している協働事業ガイドラインやマニュアルの収集と分析を行った。その結果、地方自治体においては、協働の一形態としてのNPOへの委託事業は増加傾向にあることがわかった。それとともに、「NPOの下請け化」の問題が指摘されるようになり、行政とNPOの協働に対する意識の「ズレ」をどのように調整するべきかが課題として明らかになった。 本年度は、日本の地方自治体が行政とNPOとの協働のガイドラインやマニュアルを作成する際に、モデルとしている英国政府と市民セクターの協働に関する協定書、「コンパクト」と地方自治体とNPOの協働に関する協定書、「ローカル・コンパクト」に焦点をあて、その現状と課題を把握するため英国を訪問し、英国政府と市民セクターとの協働に関する政策について聞き取り調査(内閣府、NPO、地方自治体)と資料収集を行った。その結果、英国政府は市民セクターのエンパワーメント、とくに組織の基盤強化と人材育成に力をいれるために財政的支援の仕組みを整えたこと、市民セクターとの協働をさらに推進するという政府の方針・政策が進められていることが明らかになった。
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