本研究の目的は、地方自治体におけるNPOへの業務委託に焦点をあて、その現状を把握し、問題点を検証し、課題を明らかにし、協働としての委託事業のあり方について、今後の方向性を示すことにあった。これらの目的を達成するために47都道府県のNPOと行政の協働施策を対象として事例調査を行った。また、委託事業については、24都府県、5つのNPOを対象に聞き取り調査を行った。その結果、以下のような課題が明らかになった。 第1に、ほとんどの都道府県における協働に関するガイドライン(指針)やマニュアルの作成が、行政サイドの必要性に端を発して一方的に行われていることである。第2に、「協働型事業」提案制度の1制度設計・運用に関することである。この種の制度を採用する際に、「パイロット的」あるいは「モデル的」に行われているケースもあり、その場合は2年から3年程度の時限を定めて予算化が図られていることが多い。第3に、協働事業における「委託」の取り扱いである。対象事業や対象団体の限定、また選定プロセスの公正化・透明化を図ることなどにより、既存の業務委託とは異なる基準を設定し、これにより委託契約の「特例的な」運用が図られているところも増えつつある。ただしそれらの多くは、一般競争入札における「価格競争」を代替する選定段階でのシステムといえ、たとえば契約書の記載事項や金額設定の問題、支払い方法など事業の実施段階におけるNPOとの協議体制については、しくみが不十分である。第4に、協働事業評価に関することである。協働事業評価については、「協働関係」の振り返り・評価を重視するものと、「協働事業」を評価するものが実践事例としてみられる。「協働事業」による成果を明らかにし、既存の行政サービスとの相違点やメリット・デメリットを公表していくことで、協働事業の必要性についての認識を広め、理解を得ていくという視点が不可欠である。
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