記述言語MAXを使った電子音楽または音楽を優位的表現要素とするメディアアート作品を対象とし、作品内での<interactivity>を基準にして基礎研究を行った。こうした作品でのinteractionは音楽を提示ないし受容する際のコミュニケーションを書き換えていくものであるので、音楽美学的考察としては、作曲/演奏/聴取のどの場面においてMAXが新しいコミュニケーション形式を提示するかを視軸とした。舞台空間でMAXによるinteractionが実現される場合、生演奏が存在すれば、舞台の視覚要素は、第一に、生演奏の人間動作やそれに基づく発音現象としての視聴覚因果関係で示される。そこに映像をはじめとする第二の視聴覚因果関係が付け加えられる場合、二重の視聴覚関係が生じる。これはMAX/jitterを記述言語として使用する場合に多く見られる。従って、二重の視聴覚コミュニケーションが、単一の場(空間)でどのように実現可能か、が美学構築のポイントとなる。また、視聴覚関係は、音の定位や移動とも密接に関係し、spacializateurによる空間デザインも必要になる。 今年度の成果は、論文の他、MAXを使う場合と使わない場合の両方のケースの実験的作品製作としてまとめた。これらの作品は、オーストリア国営放送ホール(ウィーン)、リスト音楽院(ブタペスト)、ブルックナー音楽院(オーストリア/リンツ)、神奈川県民ホール、すみだトリフォニーホール、名古屋市立大学音響デザイン室で上演した。
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