本研究は、元東京新橋組合副頭取で戦後約50年の間、新橋で芸妓を勤めた「小ひ奈^<(注)>」が残した映像資料を保存・分析をすることを通じて、関東の芸者座敷踊りの様式の特徴や上演作品の特徴を分類・分析することを目的としている。初年度は、小ひ奈の映像資料(録音資料も含む)の整理を行い、二年目の平成17年度は、未整理な映像(約30本)および録音テープ資料の整理(新たに約50本の音源を入手)を続けるとともに、舞踊評論家および邦楽研究者の協力を得てデジタル保存した資料(作品名や踊りの種類、特徴等)の分析・整理を実施した。また、「小ひ奈」を知る新橋花柳界の方にお目にかかる機会を得て、花柳界が持つ独特な文化性や、東京の花柳界の中の新橋の位置づけに関するインタビューを実施することができた。さらに、「小ひ奈」が現役時代に使用した裾引きの衣装、三味線、写真、出演プログラム等の提供を親族から受け、「小ひ奈」の足跡をたどる資料の入手を進めることができた。 映像資料の扱いに関しては、芸妓という特殊な職柄の映像資料である為、被映像者のプライバシーを含めどのような加工・保存処理をすることが資料として有効かどうかという課題がある。この件に関しては、親族および花柳界からのご助言、舞踊評論家の客観的な立場からのアドバイスを受けながら作業を進めている。 研究最終年度となる18年度は、映像・音源の資料整理・分析とデータベース化を行い、「芸妓・小ひ奈」の視点から、芸妓の舞踊・座敷舞踊の特徴を明らかにしていく。 注)"小ひ奈"は、大正15年(1926年)東京築地生まれ、離婚の後、昭和24年(1949年)に花柳界に入る。幼少より花柳流の日本舞踊を学び(名取名:花柳祿豊)、舞台で立役(男役)として活躍。平成11年12月(1999年12月)に他界。
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