公共劇場・公共ホールといった文化施設をめぐる環境は近年、大きく変化している。単なる施設の急増というだけでなく、運営組織や制度の変化、学校教育等との連携、アウトリーチ活動などの展開、都市政策との連関といった様々な環境変化の中で、こうした組織の運営を担う人材をいかに養成していけばよいのか--、本プロジェクトではこの課題への基礎的な研究として大きく二つの調査課題を設定し、作業を進めた。 1.日本国内の事例調査 日本において、アーツマネジメント教育を実施している事例を大学に限らず収集し全体像を把握した。そして、こうした教育を実施している大学のリスト作成を試みた。近年、非常に多くの大学にこういった科目が開講され、広がりを見せていることが把握されたが、アートマネージャーの養成を主たる目的にカリキュラムが組み立てられている例は少ない。また、いくつかの大学のカリキュラムや進路などについて考察した。学部教育や大学院教育の役割の違い、目標とする人材像の設定の難しさ、実践的な教育の方法、現場との関係構築、就職先といった様々な課題が改めて確認された。「アーツマネジメント教育と芸術現場」をテーマに開催された文化経済学会<日本>の秋の講演会(2005)の開催に協力し、アーツマネジメント教育とインターンシップの問題などについても大学・現場双方の状況把握に努めた。 2.海外の事例調査 イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、ロシア、ウクライナの事例について、劇場や大学等へのヒアリングを中心に、関連事項も含めながら調査を実施した。いずれの国においても、こうした教育の必要性が認識されており、教育プログラムが大学によって実施されている。それぞれその背景やシステム・特徴に差異が見られるが、科目や教員、現場と大学の連携などにおいて、短い教育期間で効果をあげられるよう様々な工夫が試みられていることが把握された。
|